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ホームイベントシンポジウム 第16回RIETIハイライトセミナー 生産性向上と働き方改革(議事概要) 印刷 開催案内 配付資料 開催報告概略 [PDF:317KB] 議事概要 イベント概要 日時:2016年11月17日(木)14:00-16:00(受付開始13:30) 会場:経済産業研究所セミナー室1121号室(100-8901 東京都千代田区霞が関1丁目3番1号 経済産業省別館11階) 議事概要 少子高齢化が進む中、日本が経済成長力を確保していくためには、労働生産性の向上が欠かせない。そのために必要とされるのは女性や高齢者などの潜在労働力の活用と、多様な働き方の選択肢を広げる「働き方改革」で、政府も「ニッポン一億総活躍プラン」の柱に掲げている。本セミナーでは、RIETIプログラムディレクター・ファカルティフェローの2氏が登壇し、鶴光太郎氏は生産性を高めるための働き方改革の在り方を中心に、深尾京司氏は日本の生産性を高めるために必要な政策を中心に提言した。引き続き、ディスカッションが行われ、これからの経済システムや労働法制の在り方などについて活発な議論が交わされた。 理事長挨拶 中島 厚志 (RIETI理事長) 本日のテーマは、政府が現在懸命に取り組んでいる「生産性向上」と「働き方改革」である。世界最速で少子高齢化が進んでいる中で労働力を確保していくためには、女性や高齢者にもっと活躍してもらわなければならないし、働き方の選択肢も多様にしなければならない。それによって生産性を向上させて経済の活性化を図ることが、最終的にはわれわれの消費や所得に結びついていく。 専門的な見地からのお話を伺うべく、お二人の先生にパネリストをお願いした。慶應義塾大学大学院商学研究科教授の鶴光太郎先生と一橋大学経済研究所教授の深尾京司先生で、いずれもRIETIのプログラムディレクター・ファカルティフェローである。 まず、鶴先生から、実際に政府の働き方改革に関する政策等に関与されてきた立場も踏まえ、生産性を高めるための働き方改革や「ニッポン一億総活躍プラン」のポイントなどについてお話しいただく。続いて、日本の生産性分析では第一人者である深尾先生から、日本の生産性が低い要因について、多様な観点からお話しいただく。その後、ディスカッションを挟んで、会場の皆さまからご質問を受ける時間も設けたいと考えている。 講演1「生産性向上と働き方改革」 鶴 光太郎 (RIETIプログラムディレクター / ファカルティフェロー / 慶応義塾大学大学院商学研究課教授) 働き方改革の全体像 今秋、安倍政権は「働き方改革実現会議」を設置した。安倍首相は9月の第1回会議で9項目のテーマについて検討すると表明し、10、11月と既に3回の会議が開催されている。 安倍政権下では、2013年から2015年秋にかけては規制改革会議や産業競争力会議が中心となって、雇用についていろいろな提言をしてきた。2015年秋からは一億総活躍国民会議が動き出し、さらに2016年秋からは産業競争力会議は未来投資会議に衣替えし、雇用の議論は働き方改革実現会議が中心となって検討を進めている。 私は、RIETIでの研究成果や規制改革会議委員としての提言なども合わせて『人材覚醒経済』を著した。日本経済が成長するためには労働参加を高めなければならず、そのためには多様な働き方が選択できるようにしなければならない。ジョブ型正社員、夫婦共働きがデフォルト化して女性の活躍に大きく影響してきており、ICTの徹底活用による新たな働き方が普及することで働き方・人材の多様化によるイノベーションも出てくる。 そうした中で急がれるのは、多様な働き方改革を支える環境整備である。職場における健康・安全の確保、同一労働同一賃金のような公平・公正な処遇の実現、新卒一括採用や雇用終了、高齢者の雇用促進など、雇用の「入口」「出口」の整備と同時に、社会保障制度の整備など、働き方改革と補完的な公的インフラ整備を進めなければならない。 さらに、教育・人材力の強化も求められる。人材の質は生産性に関係するため、非認知能力といわれる部分の性格スキルの向上や、新たな機械化を迎えるに当たっての補完的スキルの養成などを相対的に組み合わせることで、個々の人材と経済全体が覚醒し、経済成長が遂げられていくというのが、私が考える「人材覚醒経済」実現へのロードマップである。 日本の労働市場には、正社員の「無限定性」という特徴がある。正社員は将来の勤務地や職務の変更、残業を受け入れる義務があるという前提で処遇が高くなっているため、無限定正社員は非正規雇用からの転換が容易ではなく、労働市場の二極化につながる。また、長時間労働や転勤を受け入れることが前提になっているのでワークライフバランスがとりにくく、妻は専業主婦として家族を支えることが要請されるため、女性の活躍を阻害する部分もある。さらに、無限定性が行き過ぎれば過労死やブラック企業の問題も生じる。このように、正社員の無限定性は働き方に関わる多くの問題と密接な関係を有している。 RIETIが平成26年度に行った「正社員・非正社員の多様な働き方と意識に関する調査」によると、働き方に対する不満は無限定正社員で非常に高く、限定正社員はそれほど高くない。総合的な仕事の満足度は限定正社員が高い。もう少し細かく見ると、賃金の満足度は無限定正社員と限定正社員であまり変わらず、時間当たり賃金で見るとむしろ限定正社員の方が、労働時間が短い分、満足度が高くなる場合もある。 働き方改革は「エビデンスに基づいた政策」か 「ニッポン一億総活躍プラン」では、同一労働同一賃金の実現に踏み込むとしている。同一労働同一賃金が重要視されたのは、日本ではパートタイム労働者の賃金水準が他国に比べて相対的に低いという現状認識が出発点となっている。しかし、非正規雇用については賃金格差が説明しにくい有期雇用に着目すべきだ。経済協力開発機構(OECD)加盟国間の有期雇用の賃金ギャップを見ると、欧州諸国は20〜40%となっているが、学歴、勤続年数、職種などの属性をコントロールすると10〜20%に収まる。日本の賃金ギャップは36%で、RIETIによるWebアンケート調査を参考に属性を加味すると、欧州諸国と大体同じ水準になる。 そのため、非正規雇用労働者に関する現状認識には疑問が生じるが、やはり処遇改善は進めていかなければならない。そこで政府は、同一労働同一賃金という言葉を使って合理的な理由のない待遇格差を禁止しようという形で進めているが、職務内容、勤続年数、キャリアコースの違いによる格差は合理的と認められる可能性がある。そうなると、上記の分析を踏まえると、合理的理由のない待遇格差を禁止しても、賃金格差はそれほど縮小しないと考える向きもあるだろが、注意が必要だ。 加えて、同一労働同一賃金を強制されたとしても、企業は正社員と非正規社員の職務・職種を違わせることで賃金格差を正当化させることもできる。重要なのは、格差を設けることが合理的と判断される場合でも、格差が要因の違いに見合ったバランスのとれたものにすること(均衡処遇)が重要であり、どの程度の格差が妥当であるかはケースバイケースで判断する必要がある。 もう1つ問題なのは、雇用終了に関する紛争解決である。欧州には金銭解決という解決方法があるが、現状、日本では解雇無効を争うしかない。規制改革会議では諮問を受け、紛争の未然防止・転職支援、紛争解決の早期化とともに、紛争を解決するための選択肢の多様化について検討すべきと答申した。ポイントは、解決金制度を導入して金銭解決の選択肢を労働者に明示的に付与し、労働者側からの申し立てのみを認めることを前提として、「金さえ払えば首切り自由」という批判を受けないよう使用者側からは金銭解決を持ちかけないことを明記したことである。 検討の中でとくに議論が集中したのは、解決金の適当な水準である。日本の労働審判で実際に支払われた金額と勤続年数の関係は、海外と大差ない。ただ、日本では勤続年数に従って賃金が上がるので、欧州と同じような仕組みをそのまま入れてしまうと少し割高になる可能性があるという点は考慮しなければいけない。 忘れてはならないのは、解決金制度を導入する目的は、それを使ってどんどん訴訟を増やすことではなく、解決金の目安ができることで、あっせんや労働審判などでもそれぞれの特徴に応じた目安ができること、そして、迅速かつ納得性のある解決を増やすことだということである。 ただ、いろいろな課題があって、解決金の水準を一律に定めるのは非常に難しいし、解雇無効判決が出た後に再び裁判で金銭解決を図るのかという「1回的解決」の問題もある。そこで、労働者側からの申し立てのみを認めるとともに、労使協定を活用して制度適用の要件や解決金の水準を決めるなど、当事者の実情や多様性を反映した柔軟性を確保し、さまざまなニーズへの対応を可能にする仕組みづくりを今後の課題としている。 生産性を向上させる働き方改革とは 私は、ジョブ型正社員や限定正社員の活用とともに、ICTを徹底活用することで時間や場所を選ばない多様な働き方ができるようにすることが、日本の無限定正社員システムを変えていく上での大きなポイントだと考えている。 そして、時間当たりの生産性を意識した働き方をもっと進めなければならない。これまでそれができなかったのは、成果や労働時間(努力)をきちんと把握することが容易でなかったからである。それがICTでかなりできるようになれば、インセンティブの付与も工夫可能になる。時間当たりの生産性が高い働き方が評価される人事にならないと、本当の生産性は高まっていかない。 また、機械にはできないけれども、新たな機械化を伴うと価値が高まるスキルを持つ人材をしっかり育成していけば、人工知能(AI)やIoTといった「新たな機械化」に対する親和性が高まると思う。さらに、人とつながりたいという欲望が人間的な要素・スキルヘの需要を創造する。生身の人間が持つ芸術性(演劇、音楽)、身体能力(スポーツ)、思いやり(セラピー)、もてなし(レストラン)などに対して興奮を覚え、お金を払いたいという需要を生むことは必ずできると思う。 たとえば、米国では、銀行ATMが普及していく過程で大きく減るとみられた窓口係の数が、むしろ増えている。ITの発展で、定型的業務は縮小するが、個々の顧客とのより密接な関係を作ることが可能になり、追加的なサービスを提供する新たな業務が生まれているのだ。 また、医療技術者や配管工、大工など中スキルの職務は、一定の技術が求められる定型的な業務と、対面的やりとり、柔軟性、適応性などのスキルが要求される非定型的業務の組み合わせで構成され、互いに補完性が存在するため作業の切り分けができず、できるところだけ分断して機械化するとかえって非効率になるものがある。そのため、過去10年の米国の統計を見ると、中スキルの職務の人々はむしろ増加している。 つまり、人間にしかできないことはいつまでも必ず残るのである。そして、その人間にしかできないことを高く評価するのも人間である。人とAIの協働は重要であり、それがAIに支配されないための唯一の道だと思う。今後も大きな環境・技術の変化に対応して人材、経済を覚醒する雇用制度改革や人材育成を大胆に進め、新たな機械化・AIの衝撃を乗り越えていかなければいけない。今、非常に大きくて重要な岐路に立っていると感じている。 講演2「日本の労働と生産性」 深尾 京司 (RIETIプログラムディレクター / ファカルティフェロー / 一橋大学経済研究所教授) 問題意識 OECD加盟国を対象に行った国際成人力調査(PIACC)から、日本は労働者の技能は高いにもかかわらず、労働時間当たりの生産性は非常に低いことが分かる。 日本は仕事におけるスキル活用度が低く、能力と仕事のミスマッチが起きているのが現状である。とくに女性で自分の能力を仕事で使う機会が少ない人が多い。この原因として、日本でパートタイム労働者が増えていることが指摘できる。技能の高い労働者をいかに使いこなすかが生産性の面では最も大事だというのが私の問題意識である。 非正規雇用 いろいろな統計から、非正規労働者に対する企業の教育訓練は、OFF-JTもOJTも、正規労働者に比べて格段に少ないことが確認できる。また、雇い止めがあるので、人的資本が十分に蓄積されない可能性もある。 賃金構造基本調査と工業統計調査の個票をマッチングして調査したところ、正規・非正規の賃金格差よりも労働生産性の格差の方が大きいことが分かった。つまり、企業は非正規労働者を、彼らの生産性よりも安い賃金で雇って搾取しているのではなく、右肩上がりの成長が見込めず、優位性を持つ分野も刻々と変化する状況下で、伸縮性のある労働力を得るためにプレミアムを払って非正規労働を雇っている可能性があるわけである。 それは個々の企業にとって合理的ではあっても、人的資本が蓄積されないため、経済全体の生産性は低くなり、膨大な損失を生み出す。これを解決するには、低成長の下で労働の流動性を高める必要がある。 非正規雇用はとくに60歳以上の男性や20代で割合が非常に高い。女性は半分以上が非正規労働で働いており、高齢化が進んで非正規労働の供給がどんどん増えているのが日本の特徴である。見方を変えると、潤沢に供給される非正規労働を企業は便利使いしているといえる。したがって、非正規労働の雇用の供給を減らすことも重要な課題である。 日本は世界金融危機の影響でGDPが8%以上減少した。OECD加盟国の中でもかなり大きな打撃を受けた国の1つであったにもかかわらず、需要減少に主に労働保蔵で対応し、雇用の減少は極めて少なかった。8%のGDPショックのうち、3〜4%は労働投入の減少で対応し、残りの5%ほどは歯を食いしばって雇用を守り、生産を減らし、利益を減らして耐えた結果、労働生産性を大幅に落としたのである。一方、米国は雇用を切ってしまったので労働生産性はほとんど下がらなかった。このことは、2007〜2009年のJIPデータベースの産業別負荷価値変化率の要因分解を見ても明らかである。 私自身の研究も含め、従来の研究では、非正規労働は正規労働と比べて、生産性が賃金格差以上に低く、企業が非正規労働を増やしているのは、プレミアムを払ってでも雇用の伸縮性を確保するためではないか、との指摘がされてきた。この仮説が正しければ、非正規雇用の縮小には、労働需要面では、正規雇用の解雇規制緩和が有効となる。もしこの仮説が正しいとすると、戦後最大の需要ショックである世界金融危機時には、非正規雇用が大幅に減ったはずである。このようなことが起きたか否か、JIPデータベースを用いて、詳細な産業別に調べてみた。 図から分かるとおり、2007年から2009年にかけての付加価値と雇用の変化を見ると、最も打撃を受けたのは製造業だが、非製造業を含めほとんどの産業で、フルタイム労働者は減り、パートタイム労働者は増え続けた。正規雇用が減った原因は団塊世代の大量退職と考えるのがおそらく妥当だが、非正規雇用の増加はそれに伴ってパート供給が増えたことだけでは説明がつかない。世界金融危機の際、非正規雇用がバッファとして減少して、企業の雇用調整が円滑に行われるという現象は、起きなかった可能性が高い。 そう考えると、世界金融危機時を含め、企業が非正規雇用を増やし続けている原因としては、雇用の伸縮性確保よりも、非正規雇用が割安であることの方が重要なのかも知れない。 非正規雇用は労働生産性が低く、賃金も安いが、正規雇用には教育訓練を含めいろいろなコストが掛かるため、企業は割安な非正規雇用にシフトしていた可能性がある。こちらの仮説が正しければ、非正規雇用の縮小には、労働需要面では、非正規雇用を割高にすることや、正規雇用に対する職業訓練等への支援が有効となる。 加えて、いずれの仮説が正しい場合でも、女性労働を中心に家庭の事情や他の活動との両立を理由に非正規雇用を選んでいる側面もあるため、非正規雇用の縮小には正社員の長時間労働削減や限定社員の拡大によって女性労働が非正規雇用以外の働き方を選ぶことを促進すること、海外からの単純労働流入縮小などにより、非正規雇用の供給を減らす政策が重要であろう。非正規雇用は、人的資本の蓄積を妨げ、大きな社会的コストを生んでいる。非正規雇用の縮小は重要な政策課題である。 賃金率と生産性の企業規模間格差 次に、賃金率と生産性の企業規模間格差についてお話ししたい。賃金構造基本調査と法人企業統計調査を使って、労働生産性(労働時間ベース)の規模間格差が起きる原因を調べてみた。 労働生産性の企業規模間格差は、ほとんどの製造業や一部の非製造業で、近年拡大傾向にあった。労働生産性の規模間格差の最大の原因は、資本装備率である。大企業の方が、資本装備率が高く、労働生産性が高い。ただ、普通に観察される学歴や就業上の地位、性別などの変化では労働生産性の企業規模間格差の拡大をほとんど説明できない。これは近年、大企業で非正規雇用が非常に増えて、属性で見た労働の質の格差が小さくなっているためである。その中で、大企業と中小企業の全要素生産性の格差が拡がっている。つまり、中小企業が足を引っ張って労働生産性の停滞を招いているのである。 米国では賃金率の規模間格差のうち約3分の1は大卒か否か、年齢、性、就業上の地位など、通常観察される労働属性で説明できるが、日本では10分の1しか説明できない。日本で賃金率の規模間格差を生み出している要因としては、大企業は中小企業と比べて活発に職業訓練を行っていることと、おそらく優秀な傾向が高い偏差値が高い大学の卒業生が大企業に採用される割合が高いことの2つが、有力な仮説として挙げられる。 観察される労働属性の違いでは説明できない賃金率の規模間格差は、企業内訓練や労働者の素質の違い(偏差値の高い大学の入学試験に合格する能力の違いや、大学における教育成果の違い等)など、観察されない労働属性の違いによって生じているという考え方が労働経済学者の間では主流となっている。これほど長期にわたって大企業のレント(超過利潤)で賃金格差が生じているとは考え難く、優秀な人が大企業に入り、賃金格差が生まれると考えるのが標準的だろう。 また、大企業と中小企業の労働生産性の格差のうち、全要素生産性(TFP)で説明できるのは30〜40%だが、賃金格差は60%もある。賃金格差が労働者の能力を反映している場合には、これは推計されたTFPの規模間格差に混入していることになる。賃金格差とそれが反映している労働者の能力の企業規模間格差が60%の場合、大企業のTFPは見かけ上、60%の3分の2(つまり40%ポイント)程度、中小企業より高く計測される。つまり、TFPの規模間格差はほとんど全て、(人的資本蓄積の効果も含めて)労働者の能力の違いによる労働生産性の違いで説明できてしまう。やはり労働は大事だと思わざるを得ない。 このことは、中小企業の生産性や労働者の質を上げていくことで、日本にはまだ大きな可能性があるということを示唆している。そして、そのためには高等教育改革や企業における職業訓練が極めて重要である可能性が高い。 正社員の長時間労働 日本の経済システムの特徴の幾つかは戦間期、とくに1930年代に形成された。終身雇用制もその1つである。労働者の定着と忠誠を強化する終身雇用制は、戦時下の機械産業で熟練技術者を他企業に奪われないために始まり、戦争の遂行や、戦後の日本で機械産業の重要度が高まるにつれて広まった。その特徴は、年功賃金、大規模な退職金、ボーナス制度、新卒採用重視、無限定の職務内容である。 言い方を変えると、現在の日本の経済システムの根は非常に深く、ある部分だけを変えようと思ってもいろいろな制度上の補完性があるため大変で、気に入らないからといって一朝一夕に変えられないという問題がある。 日本で一番深刻な問題は人口減少だろう。日本の現行制度の下で、とくに女性が生きがいを求めて正規雇用で働くようになれば、子育てが非常に難しくなり、人口減少をさらに加速させることが懸念される。このことは、所得が低くスキルがあまり蓄積されない男性と、高度な教育を受けた正規就業の女性の平均初婚年齢がだんだん上がっているというところに表れており、働き方の問題は人口減少の問題とも密接につながっているといえる。 どのような政策が必要か 必要とされる政策の1つは、企業にとって非正規雇用のコストを引き上げることである。非正規雇用労働を不足させ、賃金率を引き上げることが大事である。これにより、労働の非効率な利用が是正され、物的・人的資本投資が促進され、デフレからの脱却が図られる。 2つ目に必要なのは、正社員における長時間労働の是正である。これはそう簡単ではないと思うが、労働時間の規制を強化し、裁量労働制を単に促進するのではなく、職務を明確化した限定正社員を拡大する。これによりワークライフバランスがとれ、非正規雇用への労働供給が減少するだろう。また人口減少問題の真の解決にも繋がろう。 3つ目は、人的資本の蓄積である。中小企業を中心とした職業訓練の支援、ジョブカード制の再構築、企業内教育に頼らず高等教育を改革することを考えなければいけない。これにより、停滞している人的資本の蓄積が活性化し、中小企業の生産性の向上も期待できる。 ディスカッション 伊藤: 経済産業省産業人材政策参事官の伊藤です。36協定見直しと脱時間給の法案をトータルパッケージで見直すべきという意見があるが、これについてどう思われるか。 鶴: 脱時間給の法案は審議にすら入れず、成立の見込みも全くない状況が続いている。安倍政権発足時にかなり議論したことが棚ざらしとなり、今の働き方改革の中にもうまく位置付けられていない。その中で36協定の見直しを直に議論しているわけだが、つまみ食い的な議論ではなく、労働時間の上限規制の導入と適用除外の拡大の2つをセットにして改正案を出した方が、方針がより明確になる。だから、私は全体を見直してもう一度検討し、より良い制度を考えた方がいいのではないかと思っている。 伊藤: 労働時間に関連して、フリーランスが最近注目されているが、フリーランスは労働法制の対象にならないので、労働時間管理や社会保障といったルールの空白地帯になっている。フリーランス保護の在り方について、お考えがあればお聞かせいただきたい。 鶴: フリーランスの問題は本当にいろいろな方面から注目を浴びていて、早急に政府で検討して、何らかの枠組みや法律体系を作っていかなければならないと思うので、幅広く関連の方々を集めて検討していただきたい。 伊藤: 過去、日本企業の主たる人材育成の手段はOJTだった。労働市場が流動化すると、今までと比べて企業における人材育成のインセンティブが薄れることが懸念される。人材育成の主役が企業から個人に移るようになったとき、その担い手はどうなるのか。 深尾: 非正規雇用化の最大の問題点は人材育成だと思う。したがって、たとえば正社員の長時間労働を減らし、女性も正規雇用で働けるようにして非正規雇用を減らすことが一番大事である。同時に、流動性も高まると思われるので、個人で教育を受けることももちろん大事になる。 そうなると、とくに大学などがもっと活発に社会人教育をしていく必要が出てくるが、指摘したいのは、文部科学省がまだ工学部を重視している点である。今、製造業で働く労働者は全体の15%以下になっている。一方、産業界で必要とされているIT人材は不足する状況にある。社会が求める非製造業で必要とされる労働者のスキルについて本気で考え、それを文科省の政策に反映させていかなければならない。 中島: 無形資産投資を高めれば企業の生産性は高まるとは思うが、非正規労働者の教育はどうすればいいのだろうか。 深尾: 教育訓練を含め、無形資産投資全般が減っているのは非常に深刻な問題だと思う。日本では担保価値を重視した銀行融資が中心なので、とくに中小企業を中心に無形資産投資が少ない。中小企業が無形資産に投資できる環境をつくっていくことが非常に大事である。まずは社会保障制度を改革してその面での膨大な財政赤字を削減した上で、社会資本投資も含めて将来のため投資を促進する方向に財政政策を変えていくべきだと思う。 中島: 賃金率の企業規模間格差について、先生の資料(P28)の大企業と中小企業間の分業構造や国際分業における日本の役割分担を変える必要がある可能性というところについて詳しく教えていただきたい。 深尾: これまで、中小企業は取引関係を通じて大規模な組立メーカーから技術を伝授されてきた面があると思うが、企業の取引関係がどんどん希薄になる中で技術の伝授も減っている。それが製造業における中小企業と大企業間の生産性格差の原因になっている可能性が高い。今後、中小企業は独立独歩でやっていくしかないので、自前での研究開発を支援すべきだろう。 国際分業についてはタスクトレードという考え方があって、同じ産業による輸出財・サービスの生産といっても各国で投入しているタスクが違う。同じ産業でも、研究開発を非常に活発に行っている国もあれば、営非熟練労働を大量に投入している国もある。日本の製造業は、他の先進国と比べて販売や営業といったタスクをたくさん投入しているとの指摘がある。国際分業の中での日本の位置付けがどう変わってきているのか、タスクトレードのような国際分業の視点から、もっと研究してもいいと思う。 中島: むしろ中小企業を合併・統合させるなりして規模拡大した方がいいのではないか。日本の中小企業比率が高いのはいい面もあるが、逆に二重構造が改善できない背景になっている気もする。 深尾: 中小企業が規模の経済の恩恵を享受できないから生産性が低いのではなく、恐らく大企業と役割分担が違うのである。これまで大企業が子会社をたくさん作って、不要な人材やアクティビティについては外に出すというやり方をしてきたのは合理性に基づいてのことだったのだろうから、企業が大きくなれば一朝一夕に問題が解決するとは限らないと思う。 中島: 限定正社員は不満が少なく、逆に無限定正社員の不満が強いにもかかわらず、なぜ改革が進まないのか。 鶴: 無限定正社員システムは法律で規定されたものではない。法律で決められたものであれば法律を変えれば変わる可能性があるが、そうでないものを一気に変えることは非常に難しい。岩盤なのは、法律ではなくわれわれの考え方や意識なのではないだろうか。50代以上では、いまだに無限定正社員システムが非常にいいと信じている人たちが多い。さらに、日本の場合、長時間労働がむしろ雇用を守っている面もあることから、労使ともに現状を変えたいとは思っていないところもある。 中島: 個別紛争解決における労働局のあっせんは、使用者側の参加率が低いことから全体の解決率も低いという話があったが、なぜ使用者側の参加率が低いのか。 鶴: 制度発足のときに使用者の参加を義務づけないことにしたからだ。使用者側が参加しなければもちろん解決しにくいのだが、任意のシステムであることでフレキシビリティを深めている部分もある。あっせんは、割とスピーディで簡易な方法であることからかなり利用されている。弁護士費用も掛からないので、中小企業も非常に利用しやすい。 紛争は1回参加して決着すれば、裁判よりも解決金額が少なく済むのが現状である。使用者がそれなりに誠意を持って臨めば、コストと時間をかけずにお互いが納得する形で解決できる仕組みなので、使用者側にそのような認識をもう少し持っていただけるように促している。ただ、紛争解決を政策で強制化してしまうと、かえってうまくいかないという意見もあるので、慎重に取り扱う必要があると思っている。 中島: 高齢者についても同一労働同一賃金にして非正規雇用を減らせば、生産性向上を十分期待できるし、待遇改善も期待できると思うが、いかがか。 深尾: 基本的に非正規雇用一般の問題は高齢者にも当てはまる。企業が退職者の再雇用を含めて高齢者を有効に使っているかどうかは、今後ますます重要な問題になると思う。 鶴: 一番問題なのは60歳定年である。望めば同じ企業で65歳まで働ける仕組みができたとはいえ、定年後は同じ仕事でも賃金が4〜5割下がってしまう。それで裁判になった例もある一方で、法律に抵触しないようにこれまで経験したことがない仕事をさせるとなると人的資本の活用にはならない。継続雇用を推し進めるあまりに、みんなが生きがいを持って働けなくなっているのではないかという非常に大きな問題を生んでいる。 現在は定年時の賃金が高過ぎる。むしろ定年の少し前で緩やかにして、企業にとって定年後の1〜2年働いてもらっても構わないぐらいの待遇にしておけば、もう少し働きたいと思うのは非常に自然なことだと思う。今の継続雇用のシステムはいろいろな矛盾が表れてきており、考え直さなければならないと思う。 中島: 生産性向上と働き方改革を政策的に進める上で、優先されるべきは何か。 鶴: 多様な働き方改革に尽きると思う。それにより労働参加が促進され、人口減少問題もカバーされていくと思う。ITの活用も、多様な働き方を促進する上で非常に重要である。ITが活用されれば女性も活躍でき、いろいろなスキルを持ったいろいろなタイプの人が組織内で働く世の中になっていく。これまでは金太郎飴のように同質な人たちを新卒で一括採用して、その企業のカラーに染め上げていたが、これからは多様な人たちをどう束ねていくかが非常に重要で、その多様性の中からイノベーションが出てくる。 深尾: 正社員における長時間労働の是正が非常に大事で、その方策にはもちろん限定正社員の拡大も含まれる。非正規雇用の供給を下げ、現在の非効率的な非正規雇用ではなく、限定正社員を含めて多様な働き方が選べる社会になっていくことが大事である。同時に大学改革も行い、中小企業にも人的資本を蓄積していくことが重要である。 Q&A Q: 生産性の低下や長時間労働を生んでいる土壌として、エージェンシースラックがあると思う。具体的に言うと、株主の利益最大化よりも委任者(労使)の利益最大化に陥りやすいところがあるのではないか。 鶴: 確かに株主と他のステークホルダーの問題は、永遠のテーマだと思う。ただ、とくに従業員というステークホルダーについて考えた場合、長期的な視点で企業価値を最大化させるためにはとにかくパイを大きくしなければならないわけで、株主に対して企業価値を最大化させて企業のパイを大きくしていけば、他のステークホルダーに対してもいろいろ配慮できるし、従業員自身も生き生きと働くことができて人的資本も高まる。それがイノベーションにも反映するし、企業価値の向上にもつながるという考え方ができる。 そもそも対立する概念だと考えてしまうとどうしても問題が出てきてしまうが、私は働き方改革は企業のリピテーションを高める方向のものではないかと非常に強く感じている。女性の活用も同様である。そうすると一体的に考えられるので、世の中的にも評価していく雰囲気づくりをしていかなければいけないと考えている。 イベント シンポジウム ワークショップ BBLセミナー 終了したセミナーシリーズ 情報発信 ニュースレター 更新情報RSS配信 Facebook X YouTube 研究テーマ プログラム (2024-2028年度) プログラム (2020-2023年度) プログラム (2016-2019年度) プログラム (2011-2015年度) 政策研究領域 (2006-2010年度) 経済産業省共同プロジェクト プロジェクトコンテンツ 調査 フェロー(研究員) 論文 ディスカッション・ペーパー(日本語) ディスカッション・ペーパー(英語) ポリシー・ディスカッション・ペーパー(日本語) ポリシー・ディスカッション・ペーパー(英語) テクニカル・ペーパー(日本語) テクニカル・ペーパー(英語) ノンテクニカルサマリー 英文査読付学術誌等掲載リスト Research Digest 政策分析論文 調査レポート 論文検索サービス 出版物 RIETIブックス(日本語) RIETIブックス(英語) 通商産業政策史 著者からひとこと RIETI電子書籍 年次報告書・広報誌(RIETI Highlight) その他出版物(日本語) 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